原体験をパラメータに連動する流れ


経洗塾を通じて多くの方々とベンチャービジネスの構想を検討していると、

”原体験”をどう選定するか?
その原体験をどうベンチャービジネスに繋げるか?

という質問をほとんどの現場で受けます。


これは塾のノウハウ的な部分と一般的な知見部分を織り交ぜた内容なので、ブログで発信しようと思います。

 

 

ビジネス構想の取っ掛かり

 

まず、自分の熱意が向いているマーケット、プロダクト、サービスを明文化します。
このプロセスで多くの方々は周囲に意見を求めます。塾では、以下の2つの行動を出来るだけ行わないようにしましょう、とアドバイスします。

 

・出来るだけ周囲のアドバイスを受けない
・ビジネスモデルを考えない

 

理由としては、アドバイスを受ければ受けるほど、自分の原体験から離れていってしまいます。それが最終的に自身のビジネス構想の違和感に繋がる場合がほとんどです。

初期のトラクション(顧客牽引力)チェックと顧客獲得コスト(CAC)がベンチャービジネスを検討する上で大切な要素ですから、初期の原体験探しを他者に委ねることにより、以下のようなことが発生してしまうリスクを抱えてしまいます。

 

・他者のアドバイス=他者の強みをベースにしたビジネス構想により、
 初期の顧客獲得コスト(CAC)が上がってしまう

・ビジネスリリース初期の段階で独自の顧客獲得が出来ない

・初期のPMF(プロダクトマーケットフィット)が自身で定義化出来ず、

 マーケットのセグメント化が充分に出来ない

 

要するに、自身の熱意がどこに向いているかぐらいは自身でまず明文化し、それにより初めて顧客獲得の現実味を高めることが出来て、且つ初期のPMFの定義が最適化されるという流れです。

 

ちなみにこのプロセスで注意したいのが、多くの方々が”形容詞”をパラメーターの定義に入れてしまうことです。

”可愛そうな”
”難しい”
”大切な”
”大変な”

最終的には全て数値に連動するわけですから、数値が紐付かない定義は全て数値で言い表せる単語に変換します。

”〜が〜以下の個人”

”〜が〜より〜%以上の法人”
”〜を〜より%以上重要視する”
”〜の達成率が〜より〜%低い”

 

というように、全ての形容詞を削除していきます。



パラメーター係数選定後の最大売上規模の数式化

 

パラメーター係数を自身の力で定義化した後には、最大限の情報収集を行い、

以下のような計算式に落とし込みます。

 

パラメーター係数×単価×係数の市場存在数×目標シェア=最大売上規模

 

ここで大切になってくるのが、パラメーター係数に充分な潜在キャッシュと将来キャッシュが存在しているかという点です。ここが多くのベンチャーが評価の土俵に上がるかどうかの分かれ道だと感じます。”そもそもそこにビジネスあるの?”って指摘を受けてしまうベンチャーが意外に多いのは、ここの精査が充分に行われていない場合が多いです。

 

潜在キャッシュとは、 幼児を対象にした教育ビジネスの場合には幼児を養っている親が実際にはキャッシュを生み出してくれる顧客なので、潜在キャッシュは親側に存在するわけです。意外にもこの単純な考えが事業構想に落とし込まれていない場合があります。

 

赤字会社や中小企業にB2Bサービスを提供したい場合にも、赤字会社や中小企業がそのサービスに支払う余力があるのか、その余力をどのセグメントユーザーのどの部分のキャッシュから捻出してもらうのか。そういった潜在キャッシュの明確な説明を将来キャッシュに連動することにより、初めて第三者に理解してもらえるサービスとなります。

 

 

最大売上規模を算定した後のトラクションチャネル選定

 

パラメーターの係数と最大売上規模が算定出来ると、自然とそのパラメーター係数の積載をどう達成するかを検討するプロセスに入ります。

こちらに関しては、以下の書籍が非常に有益です。

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ラクションとはベンチャービジネスの初期段階で、初期の顧客を掴むマーケティングチャネルを如何に選別するか、どう初期のビジネス牽引力を計画するかが説明されています。

 

本書籍内では、19のトラクションチャネルが存在すると記載されています。

1.パラレルマーケティング

2.PR

3.規格外

4.SEM

5.ソーシャル/ディスプレイ広告

6.オフライン広告

7.SEO

8.コンテンツマーケティング

9.メールマーケティング

10.エンジニアリングの活用

11.ブログ広告

12.ビジネス開発(パートナーシップ構 築)

13.営業

14.アフィリエイトプログラム

15.Web サイト、アプリストア、SNS

16.展示会

17.オフラインイベント

18.講演

19.コミュニティ構築 

 

このステージで大切にしたいのが、当然ではありますが顧客獲得コストとキャッシュフローの連動です。ここが地方におけるベンチャービジネスの難しい部分でもあります。本文で説明させて頂いたパラメーター係数の積載をどのチャンネルでどう創り上げていくかを選定する上で、以下を加味する必要があります。

 

①自社のキャッシュの体力

②選定したチャネルへのアクセス

③外部のキャッシュの利用によるチャネルの変化

 

ベンチャービジネスは、リリース初期の段階で最適化された顧客獲得コストで最大限の成果を出すことにより、そのビジネスの成長性を証明したいですから、やはりここでも大切になってくるのが徹底的にセグメント化されていて、徹底的に数値で定義化されたパラメーターの係数となります。それがないと、トラクションチャネルが選別出来ませんし、最適なキャッシュフロー計画を策定出来ないので。更には、プロダクトのマーケットフィットも最適化出来ないという負の連鎖に陥ります。

 

地方からベンチャーを創出する場合には、このトラクションチャネルを選定する上での”人材の欠如”、”ノウハウの欠如”、”アクセスの欠如”が発生しますので、いわゆる事業構想のリアリティを自社で立証出来るのかをしっかり考える必要があります。

 

 

ビジネスモデルの構築

 

ここまで来て初めてビジネスモデルの構想に入ります。

このやり方はあくまで経洗塾スタイルではありますが、ここまでクリアした塾の参加者は驚くほどの爆速で事業計画を創り上げます。既に自身が目指したいマーケットと、そのマーケット規模が見えているのでやらない理由が無くなってくるんでしょうね。

このプロセス以降は、幾らでも第三者に相談しても良いステージとなります。各業界毎にプロダクトの専門家が多く存在しますし、各業界毎の専門書も多く出版されています。

 

 

まとめ

 

ベンチャーアクセラレーションプログラムや相談窓口の現場で多く見受けられるのがビジネスブラッシュアップという名のビジネスモデル検討ですが、そもそもの原体験探し、ビジネス入り口探し、根幹となるパラメーター係数探しが塾では最も重要なプロセスと捉えています。

 

このプロセスが最適化されて、初めてベンチャー候補者達が自由にベンチャービジネスの入り口に立てるはずです。だからこそ、闇雲にビジネスモデルから考えるのではなく、自身が本当に大切にしているマーケットを丁寧に考える時間を設け、周囲の支援者もその時間と思考を尊重してあげる関係性が地域におけるベンチャーエコシステムを向上すると思います。