ベンチャーエコシステムの細分化とベンチャー創出の関連性

 

中国地方を中心に経洗塾を8年以上展開してきて、他地域のベンチャー創出環境の実情も把握したい思いがどんどん強くなってきました。そこで、最近では四国、九州にお邪魔する機会を積極的に設けるようにしてます。

 

先週も福岡県北九州市長崎県長崎市にお邪魔し、多くの方々と交流させて頂いた時間を通じて感じたのが、

 

ベンチャーエコシステムの細分化とベンチャー創出の関連性”が地域に及ぼす影響をその土地の方々がロジカルに理解する必要性と、

 

”その理解が広がることによる各地でのベンチャー創出の確度と速度の向上が、各地域の経済活性に貢献することを科学的に学ぶことの重要さ”でした。

 


経洗塾が提唱したい地方における理想的なベンチャー創出環境の最適化は、ちょっと一般的な定説とは異なるかもしれません。

①現状の経済活性化策からシード創出活動を分離。
②各シード毎に支援エコシステムを構築。
③各シード毎に事業計画、資本政策、成長戦略等を独自のエコシステム内で情報開示。
④そのエコシステム数を拡充することにより、各地域にエコシステム数の積載が発生。⑤エコシステム感での相乗効果を生む。

 


・何故、既存経済活性化策から分離なのか?

・何故、シード毎の支援エコシステムなのか?
・何故、各シード毎の早期情報開示なのか?
・何故、地域毎ではなく、エコシステム数の積載なのか?

ツッコミどころ満載。

中国地方以外ではこの提唱をこれから立証していく計画なので、まずは公表されているデータを羅列してみます。



中小企業庁https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/html/b3_3_1_1.html

 

マネーフォワード

https://biz.moneyforward.com/blog/25780/

 

人口減少時代なので、地方の既存経済を支える中小企業の経営者数は自然減少します。故に、法人数と法人納税数も自然減少します。追い打ちをかけるように、既存法人の経営者の2割以上が”自分の代での廃業もしょうがない”と考えています。

当たり前じゃん!って言われるかもしれないですが、その当たり前が各地を訪問してると、実は色んな”地域目標”や”地域努力”で現実問題が見えなくなってる、直視しない、反論したがる、が横行してます。

 


中小企業白書https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf

 

企業規模が大きくなればなるほど、対外直接投資を加速させ、国外雇用を加速し、体内直接投資を削減します。人口減少時代に優秀な人材の雇用を海外人材で担保し、人口が増加する成長市場に対する直接投資を行うことにより、組織の成長を維持します。

それが資本主義でしょ!って突っ込まれても、国内へのCSR活動やメディア情報依存で、各地域の法人クラスター毎の経済貢献って、実情が見えなくなります。(特に、各地の”有名”企業って、必要以上に神仏化されてる現場にどれだけ遭遇するか。)


総務省ー人口流出理由

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc141110.html

 

この問題は、中国、四国、九州、どこでもホットな話題です。地方からの人口流出の理由の9割弱は、”良質な”雇用機会の不足です。有効求人倍率でも、既存有名企業の景気動向による従業員数増加でもない、”地域の雇用機会が良質ではない”という判断からです。賃金、働き方、労働対効果、高等教育対提供労働、、、求める仕事と就ける仕事のギャップです。


ここまでで共通認識が持てると思いますし、各地で既に活動が加速している通り、以下が日本の地方が生き残る道ですよね。

 


”人口減少時代、法人数減少時代に、既存経済の海外投資流出で自然減退する国内経済、地域経済を維持・再活性化するには、創業数を増やし、新しい組織運営が推進できるベンチャー数を増やし、良質な雇用機会を創出し、地域の人口維持や関係人口の増強を行い、地域の経済構造を再定義する。”



ですが、話題がベンチャー創出方法やコミュニティーの役割に及ぶと、途端に議論が進まなくなります。地域の方々がアレルギー反応を起こします。その現場に何度も遭遇しました。

その理由も、まずは公表されている資料から引用してみます。

 


日本総合研究所

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/8033.pdf

 

87ページ辺りからです。”ベンチャーを創出するには、ベンチャーを創出するエコシステム=生態系”が重要と図解で説明されてます。地域を再生、再活性するためにベンチャーを創出したいわけです。良質な雇用を創出できる組織を増やしたいわけです。図解のエコシステムを形成する要素は、そのベンチャーを創出するために必要な要素ですよね。

インキュベーター
アクセラレーター

ベンチャーキャピタル
④民間金融機関
⑤大学、研究機関
⑥専門家
⑦政府、公的機関
⑧既存企業

実際には、このエコシステムが現実的に構築出来ないからこそ、冒頭で提唱した経洗塾が考えるベンチャー創出環境の最適化に繋がるわけです。その理由として、

・各地にそもそも充分な数のインキュベーターアクセラレーターがいない。
・”創出”にリスクマネーを投資できるベンチャーキャピタルがその土地に無い、もしくは創出が第一義ではない。
・民間金融機関が収益を維持するには既存経済の海外投資、それに準じた国内投資の方が大事。
少子化時代に地方の大学にとっては、ベンチャー創出のエコシステム参画よりも高度人材の大都市圏や地域既存経済への有望な人材の輩出による、予算の維持の方が大事。強いては、組織としての生き残りの方が大事。

・専門家は、資本体力や成長性が不明なベンチャーよりも、リスクが少ない各地の中小・大手企業の業務が大事。
・政府・公的機関の予算配分は、実際には高齢化対策、高齢者対策。

・既存企業は組織維持・成長のためには、国外・域外活動に集中することが必要。


要は、実際問題として大都市圏から一歩外に出ると、ベンチャーを創出するためのエコシステムを常設化、インフラ化すること自体に無理があるんです。要は、どんなに多くの学生や若者が色んな活動を通じてベンチャーを知り、体験し、認識したとしても、人口減少時代に地方からベンチャーを生むって事自体がとても困難だということを事実関係を基に理解して、その上で最適な方法を実践することの方が重要なんです。今流行りのファクトフルネス的思考ですね。

 

 

そこで、経洗塾の提唱をざっくりと説明すると、

①シード候補を各地で選出する(各地の特性を最大限取り入れた上で)
②エコシステムの中にシード候補に入ってもらうのではなく、シード候補毎にエコシステムをカスタマイズする
③そのカスタマイズされたエコシステム参加者は、量より質重視
④そのエコシステムの成功体験を積載する
⑤積載数の増加に準じて、エコシステム参加者数を徐々に拡充する

これをまずは中国地方で未進出の地域と、中国地方以外の地域で立証するために、もう少し各地にお邪魔します。その第一歩が塾自体の開催と同時進行での各地のアクセラレーター育成講座の開催です。その先に塾自体の事業化とクラウドサービス化が見えてくると思うので。

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長崎で開催した第1期長崎経洗塾の風景ですが、今年もコツコツと地域の理解者を増やし、アクセラレーター同志を増やし、ベンチャー創出のエコシステム作りに貢献します。コツコツ感が滲み出過ぎですね。