日本の製造業もあと20年?

先週の話ですが関係企業からご縁を頂き、インドネシア産業省、インドネシア大使館工業部、
インドネシア重工業組合の瀬戸内海視察ツアーのアテンドをさせて頂きました。
その際に参加者の一人でインドネシア国内で幾つかの造船所を経営されている方から言われた言葉から、
その組合が属する製造業分野だけではなく、大枠での今の日本の製造業主と他成長国の製造業主との
意識の違いを感じたので共有したいと思います。

会食の席で、”今回の視察はどうでしたか?”とその方に質問をさせて頂いたところ、こんな返答が
帰ってきました。

”確かに技術力や資金力で日本の大手製造業メーカーはまだまだ強い。だけど、私たちも
資源力、資金力は既に充分確保しているし、これからも国の人口増加に比例した経済成長に
より益々強くなっていく。技術力に関しても事実、世界中から私達の国のマーケットや資源、
成長力が欲しいがための技術供与の話を頂いている。そんな他国との競合関係の中で日本の
製造業はあと20年くらいの寿命なんじゃないか?何故、今のうちから積極的に技術供与を
新興国の成長企業にしないのか?今の日本なら、まだイニシアチブが取れるのに。
日本の製造業主の方々はすぐに私達の国のインフラ整備の遅れや技術の問題を先行させ、
カントリーリスクのみで判断したがる。”


恐らく、この発言に対して多くの製造業主の方々からのご意見は、

”20年の根拠は?”

”技術流出のリスクは誰が補填するのか?”

”日本の技術力をもってすれば、今からでも独資挑戦の方がリスクが少ないんじゃないか?”

などなんでしょうが、実は問題の根幹はそんなところにはないんじゃないかと思う訳です。
要は、成長国にて成長企業を経営している方々の意識ははっきりしていて、過去の関係性ではなく、
今の成長をより高みに、より効率的にサポートしてくれる企業を天秤にかけ、最良のパートナーと
組む事が大切であり、これに日本の製造業主達が柔軟に対応しない限り、今よりももっと日本企業の
バイパスが進むってことなんだと思います。今はまだ、”日本が好きだから”という理由で
パートナーとして声を掛けてくれているに過ぎないということです。

勿論、日本国内の製造業が海外に積極的に進出出来ない大部分の問題は経営者の意識ではなく、金融機関の
柔軟性や国内税制に寄るところも多いとは思いますが、経営環境以前の問題として
まずは成長国における経営者視点に立った上で、日本の製造業主として何が出来るのかを考える時期に
来ているんじゃないかと思うのです。

先日のブログでも説明したシンガポール高等技術訓練学校ここ数年で日系製造メーカーからの支援はめっきり減って、
逆に日本以外からの支援が年々増加しているそうです。どこかでこの意識の改善を行い、日本のバイパス化を
食い止める必要があると今回のアテンドを通じて感じた次第です。